アクロバティックに骨を折った父の話

はてなブログの今週のお題が『お父さん』っということなので父がアクロバティックに骨を折った話でも

 

2019年6月16日、父の日が明けた次の日

その日、父親が仕事である大工で使うベニヤ板をトラックで運んでクレーンで降ろす作業をしていた。

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ベニヤ板というのは木でできた板のことで、この時荷台に載せていたのは100枚で1セットの束を4セットだ。

イラストでは2セットだが、奥にもう2セットあると想像してほしい。

 

父はトラックの荷台に立ちリモコンを使ってクレーンを操作し始めた。

このとき、人が立っていられるスペースは荷台の後ろだけ。

つまり立ち位置としてはこんな感じだ↓

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ベニヤ板の束を受け取るため、僕はフォークリフトをトラックの横につけボケーっと待っていた。

 

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『はあー暑い死にそう辞めてえ』

 

ちかごろ心の中でこんなことばかり考えている。そんな僕の心の中を知らない父は今日も張り切っていた。

 

『ひあー痛い死にそう止めてー!』っとなるとも知らずに。

 

 

刻一刻と迫るその瞬間はそこまできていた

父はリモコンでクレーンを操作しはじめた。

 

[ウイ―――ン!]

 

エンジンの回転数が上がりクレーンが動き出し、フックとベニヤ板にワイヤーを掛け巻き上げていく。

 

徐々にワイヤーが張っていくのが分かった。

(・・・ん? あれ、ワイヤーが掛かっている位置ものすごく悪くね??)

 

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それに気づいた時はもう遅かった。

ベニヤ板100枚が急速に傾きだし、父はしどろもどろ後ずさった。

 

隣でその光景を見ていた僕は不意に走馬灯のような光景が頭に浮かぶ。

父との想い出だ。

 

 

ーー威厳ある父

 

ある日は親子喧嘩して、たまたま友達から借りていた単車をたまたま持っていた木刀でボッコボコにしていたね。

 

婆ちゃん(父の母)と喧嘩すると必ず家のどこかに穴空くよね。今でも穴を見るとあの時の怒号が耳に染みるよ。

 

父が自信満々に作った料理を食べた姉、妹、僕。期待はずれな味にみんなでマズイを連呼したらちゃぶ台ひっくり返ったね。

いやいや、アニメみたいに手で《ガッシャーン》じゃないんだよ。

足で、、、脚でおもいっきり《バギィイイイーン!!!》って蹴飛ばしてたよね。あんな重たそうな机が宙に舞うとか想像もしていなかったよ。

よく折れなかったね脚

 

・・・

 

想い出が駆け巡る

 

・・・

 

 

・・・

 

木刀

 

・・・

 

怒号

 

・・・

 

ちゃぶ台

 

・・・

 

しどろ

 

もどろ

 

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こ、これは

 

・・・

 

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威厳ある父が何かに怯える子犬みたいにしどろもどろ後退った結果

荷台の後ろ(ちょこんと上に突き出てる部分)と100枚のベニヤ板で思い切り脚を挟んだのだ。

いや、アクロバティックしたのだ!

 

つまり

 

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に挟まり、

 

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ってことだ。

 

スネから太ももにかけ大量のベニヤ板が挟まったバティック中の父はパニックになり叫んだ。

 

「アギャダアアアア!!!」

 

 

救出劇

人は尋常じゃない痛みが走ると『アギャダア!』と叫ぶ。

 

新たな豆知識を手に入れた僕は父を助けるべくフォークリフトを降り、アギャダアの元へ駆けた。

 

「イタタタイタタタイタタタ」

 

あまりに痛いのかイタタタと連呼する父。

そう、

アギャダアは最初の一回だけなのだ。

 

まあ、ずっとアギャダア言ってたらそれこそかなりヤバイ状況だが。

『アギャダアギャダアアギャダアアギャダアアギャダアアギャダア!』・・・な?

 

 

ーーとにかく意識ははっきりしていた父

それでも痛すぎるのか、本当にパニックになっていた。

 

「そそれ! それ! それ外してくれ!!

 

それとは荷台の出っ張り部分(ちょこん)のことだ。

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ちょこんは引っ掛けを外して手前に倒す事ができる。

そのちょこんを倒せば父の足は解放されることは僕の目でみても分かった

・・・だが、

ちょこんを倒せば100枚のベニヤ板も一緒になだれ倒れ、父もろとも僕も下敷きになるのは明白。

 

しかし、目の前の惨劇にどうしていいか分からずパニックになった僕は、パニックの父の言う通りそれを倒そうとパニクった。

 

・・・だが、

倒せなかった。

 

ベニヤ板の束が僕の元に倒れてくるという恐怖心なんかじゃない。

むしろ恐怖よりも父の脚を、、、ちゃぶ台蹴った脚をどうにか楽にさせたい。

その気持ちだけだった。

 

じゃあなぜ倒せなかったのか?

そう

ただ単に父の脚が邪魔で倒せなかったのだ。ちょこんを倒す引っ掛けの部分に太ももが食い込んでいて倒せなかったのだ。

 

助けてあげたくても助けられない。

どうすることもできずに慌てふためき、とりあえず僕がとった行動はこうだった。

 

 

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女子の特権、男子の目を釘付けにする前かがみを父の背を支えるために使用するとは夢にも思わなかった。

っというか、脚を救えない代わりに腰を救ったのだ!

つーかガチくそ重てえ!!

 

意味の分からない親子共同作業をしている間、他の従業員も騒ぎを聞きつけ駆けつけてくれた。

しかし、僕と同じように荷台の出っ張り部分を外そうとしたり、リフトで押したりしたが上手くいかない。

 

その間の父はもうなんか泣きそうだった。

90キロオーバーの父を支える僕の腰も泣きそうだった。

 

 

結局一枚一枚降ろすことに

さらに騒ぎを聞きつけた従業員が数名増え、結局ベニヤ板を1枚1枚降ろすことに。

 

ーーベニヤ板は仕事で使う大事なもので1枚1000円以上する。

傷をつけるとあまりよろしくない為普段なら慎重に扱う。

父もそのことは重々に承知だ。

 

「放れ! 放れ! 早くそんなもの放りなげろおおおおあああ!!!」

 

過去、仕事中言われた事がある。

『息子よ、新品のベニヤ板は高いから無下に扱うなよ。切って使うなら古いやつから切れよ」っと。

 

「そんなもの放りなげろおお!!!」

 

父の決死の訴えに『そんなもの』は放りなげられた。傷がつこうがおかまいなしに2枚3枚一気に。

 

「そう! もっと! もっとだ! 放れええ!!!」

 

背中に感じる心からの叫び

 

「そう そう そうだ! 放りまくれええ!!」

 

苦痛の叫びが少しづつ緩和され、父の目には希望の光が見えているようだった。

 

半分ほどのベニヤ板が降ろされた時、ついに父の脚は解放された。と同時に僕の腰も解放されたが、父を抱きかかえる体力は残っていない。

代わりに身体付きがゴツめな従業員が父を運んでくれた

お姫様抱っこで。

 

 

脚の具合

お姫様抱っこでなのか、痛みでなのかは分からないが、顔を少し赤らめている父は近くにあった椅子に座り脚の具合を見ている。

ゆっくりと長ズボンの裾を捲り上げると、

 

そこに現れたのは、、、

 

 

 

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ボンレスハムだった

腐ったボンレスハムだった

両足腐ったボンレスハムだった

太ももからスネに至るまで腐ったボンレスハムだった

・・・キモチワル!

 

12ミリのベニヤ板の跡が太い紐で縛られたように所狭しとくっきり浮き出ている

そして内出血だろうか?

跡という跡が青っぽく晴れ上がり、血の赤と入り混じったそれは、

まさしく腐ったボンレスハムだった。

・・・キモチワル!

 

 

ーーその後病院へいった父は治療を受け、松葉杖をカツカツいわせて帰ってきた

・・・そう

幸いにも片足だけの骨折で済んだのだ!

この程度で済んで奇跡だと思う。

 

 

ベニヤ板の重さ

今回のベニヤ板の1枚の重さは約12キロ

12キロが100枚で

・・・1200キロ

・・・つまり1.2トン!

 

1.2トンの負荷が父の脚にのしかかっていたのだ!

それなのに片足だけの骨折で済んだのは奇跡。

 

もしも脚じゃなく胸付近だったら・・・

もしも一人で作業していたら・・・

もしも炎天下の中ひたすらアクロバティックしていたら・・・

 

最悪の結末か、もっと面白い事になっていただろうw

 

完!